こんにちは。オランダ在住のMiho Guideです
前回のプロフィール記事にも書いたのですが、オランダに移住して私が一番ハマっていること、それは…「オシャレなお家の中を遠くから眺めること。」
日本でそんなことをしたら不審者になりかねないのですが、オランダではむしろ歓迎されている行為?!というかそれもオランダの文化を楽しむ1つのアクティビティーなのです!

どういうことかというと、オランダは大きな窓のお家が多いのにも関わらず、朝も夜もカーテンやブラインドを閉めないお宅が多いのです。お家の中が丸見え!というお宅も珍しくありません。
隠そうとする様子もないので、誘惑に負けてチラッと中を覗いてみると、オレンジ色のライトやキャンドルに灯されたお部屋にセンスの良い家具や絵画が置かれ、リビングでで家族揃って映画を見ているではありませんか こういうお家が本当に多いのです!
では、何故オランダ人は家の中が丸見えでもカーテンを閉めないのでしょうか?そもそも覗かれることに抵抗はないのでしょうか?
オランダの文化として重要なテーマでもあると思ったので調べてみました。
今回はCNN Newsが取材した記事や、私自身がオランダ人のお宅に何度かお邪魔して実際に体験したり聞いた経験をもとに「なぜオランダ人はカーテンを閉めないのか。」について探ってみました!そこにはオランダの歴史、国民性が大きく関係していることがわかりましたのでご紹介したいと思います。
オランダ人がカーテンを閉めない理由
「なぜオランダ人はカーテンを閉めないのか」その理由は複数あったので、大きく4つに分けました。
キリスト教プロテスタントの宗教的伝統の名残
まず、最も有力な説は宗教に関係しています。
オランダはスペインとの戦争(1568年-1648年)の後、キリスト教・プロテスタントの国として独立を果たします。
「プロテスタントって何?」「同じキリスト教でもローマ・カトリックとどう違うの?」という方に超ざっくり解説します
15世紀、豪華絢爛な教会を沢山建てていたローマ・カトリック教会はお金を使いすぎたため財政難に陥ってしまいます…。そんな財政難の危機を脱するために思いついたのが “免税符” 「教会に寄付をすればあなたのこれまでの罪は許されますよ!」という方法で信者からお金を集めました。しかし「そんなのおかしい!免税付を買えば罪が許されるなんて聖書には書いてないぞ!」と異議を唱えた人物がいました。それがドイツ人のマルティン・ルター。このルターの抗議でプロテスタントという宗派が誕生しました。(プロテスタントは日本語で”抗議する者”という意味です。)
そのプロテスタントにはカルヴァン派という宗派があります。これはルターに共感したカルヴァンというフランス人が説いたものです。オランダ人はこのカルヴァン派が多く存在しました。
カルヴァン派の人達の特徴は勤勉で禁欲。そして「正直な国民には隠すものは何もない」という考えを持っているので、カルヴァン派が多かったオランダではカーテンを閉めず家の中を見えるようにしておくことで「私は隠しているものは何もありませんよ。」「私はきちんとした人間ですよ。」ということを主張するようになったと言われています。
きっかけはオランダ人の宗教的信仰心と忠実さだったのですね!
ちなみに今もオランダにはプロテスタント(カルヴァン派)の信者が多いのかと思いきや、現在は57%以上が無宗教でプロテスタントはわずか13.6%でした!
57.5% 無宗教
18.3% ローマ・カトリック
13.6% プロテスタント
4.6% イスラム
6.1% その他

ビジネスで信用してもらう手段として
カーテンを閉めない文化は宗教の影響という話をしましたが、時代は流れ1950年代になるとビジネスの一環としてカーテンを閉めず部屋の中を見せるようになります。
人々は収入面で信頼できることを証明する手段としてカーテンを開けて窓を開放し、最高級の家具、装飾品、美術品で満たされた部屋を見せることで、商人や取引先に対して『うちにはお金があるから信用してね。』とアピールしていたんだとか!
その名残なのか、私がオランダ人のお家を見て毎回うっとりするのがインテリアのセンスの良さ!です。あまり物はゴチャゴチャ置かずシンプルな中に素晴らしい美術品や絵画がいくつか佇んでいるのを見かけます。
実際オランダ人は衣食住の中で一番お金をかけるのは『住』の部分だそうです。そしてオランダはゴッホやレンブラントのような一流芸術家を沢山輩出しているので、小さい頃から芸術に触れる時間も大切にしています。美術品を家に置くことでより心地の良い空間をつくっているのですね。
今はビジネスのためよりも居心地の良さという点でインテリアにお金をかける人がほとんどだと思います。オランダは雨が多く室内で過ごすことが多くなりがちですし、何よりオランダ人は家族との団らんの時間を大切するので、居心地の良い家づくりにお金と情熱をかける人は多いのです

オーナーのインテリアセンスが光ります。
低地の国で危険から身を守るために
オランダは国土の4分の1が海抜0m以下という低地の国。
今は頑丈な堤防もあり水害対策がしっかりされていますが、中世以降は何度も洪水に見舞われてきました。今のように通信機器がなかった時代は洪水の危険から身を守るために近所の人との結束が重要だったそうです。
2006年オランダの人類学者が行った調査によると、特に結束が固い地域の人々はカーテンを開けっ放しにする傾向があり、窓を彫像、花瓶、(偽の)花で飾る人が多いことがわかったそうです。
実際オランダに住んでいると近所の人との関わりの深さを感じることがあります。例えば配達があった時に家に誰もいなかった場合、荷物は近所の人が代わりに預かっていてくれることが一般的です。私も頼んだ荷物の宅配時間に家を留守にしていたことがありますが、その際はマンションの上の階の方が代わりに預かってくれていました。荷物を受け取ろうとお家のベルを鳴らすと応答がなかったので「留守かな?」と思いつつ大きな窓をチラッと覗いて見ると、老夫婦がソファに座りながらテレビを見ている様子が丸見えでした(笑) 私が外から手を振っていると気づいて荷物を持ってきてくれました。こういう時カーテンがないと視覚でアピールできるので助かりますね!
確かに災害時に家のベルが聞こえなかったり、外の様子に気付けなかったら避難が遅れてしまい命に関わります。
近所の人と良好な関係を築く手段としてはもちろん、災害時にお互いを助け合うため、外の異変に早く気づくためにカーテンを閉めない文化は発展したのは納得ですね
オランダ人のオープンな国民性が影響
オランダ人のオープンな気質もカーテンを閉めない理由に関係しているそうです。
これは私が日本でオランダ人相手に仕事をしていた時から感じていたことですが、オランダ人は基本的に親切で、自由で、他人に対してもオープンな人が多いです。オランダ人グループのガイドをしてから他の国のグループのガイドをすると、オランダ人がいかにオープンな気質かが良くわかります。オランダに住み始めてからも近所の方が気さくに話しかけてくれたり、すれ違った人やお店の人がニコッとしてくれることはよくあります
そんなオランダ人を表す言葉にGezelligheid (陽気さ、居心地の良さ、楽しさを)というオランダ語があります。楽しいことが好きで自由なオランダ人を形容する言葉で、オランダ人もこの言葉が大好きです。
そんなオランダ人は基本的に開放的な環境を好み、外の景色や行き交う人々を眺めるのが好きなので、遮る物がない大きな窓はオランダ人の好みのようです。
家に限らすオフィスにも開放的な窓を採用し、ブラインドやカーテンを開けっぱなしにしている企業も多いのだとか

雨の多いオランダで少しでも多く日光を取り入れるために
オランダは1年のうち130日が雨と言われるほど、1日中晴れているという日が少ないです。
晴れた日には仕事を早く切り上げたり休みを取ってでも外に出かけるオランダ人もいるほど、晴れの日は貴重でオランダ人にとって見過ごせない日光浴のチャンスです!少し前まで晴れていたのに突然雨が降り出すということもあるので、晴れている時間帯はみんな外に出たがります。
太陽の光を浴びない生活が続くとビタミンDも不足してしまい気持ちも憂鬱になってしまいがちです。そんなオランダの気候事情と健康を考えて少しでも日光を浴びるためにカーテンは閉めないと!いう人も多くいます。
それに近年はオランダをはじめ多くの国は光熱費が高騰しています!少しでも電気代を節約するためにもカーテンを開けて太陽の光を上手に活用することは、生活面でも健康面でもプラスになります。そんな私も電気代が恐怖なので日が暮れるギリギリの時間まで電気をつけずにブラインド全開でわずかな太陽の光を頼りに仕事をしています(笑)
他のヨーロッパの国もカーテンを閉めない?
はじめはヨーロッパ各国同じようにカーテンを閉めないのかな?と思ったのですが、どうやらオランダ特有のようです。(ヨーロッパ全ての国を行ったわけではないのでオランダ周辺国に限った話ですが。)
その違いに改めて気づいたのがパリへ旅行に行った時。オランダまで帰りは高速バスを使ったので車窓からの景色を楽しんでいました。日も落ちてきていたのでフランスやベルギーの多くのお家はカーテンを閉めていたのですが、オランダの街中に入ると22時を過ぎているにも関わらず多くのお家はカーテンを開けたままでした。灯りの少ない道路をお家の中から漏れる灯りが夜道を照らしてくれているように見えて、何だか歓迎されているような温かい気持ちになりました
ベルギーの北部もオランダ国境に近づくにつれカーテンをしていないお家が目立ってきたのも印象的でした。
また、オランダ人の観光ガイドの中には開放的なお家の窓の前で立ち止まってカーテンを閉めないことがオランダ特有の文化であることを観光客に説明することもあるそうです。すると家の中のご主人がそれに気づいて観光客に手を振ってくれたりするそうです。まさにオランダならではの大切な文化の一つになっているんですね
【カーテンを閉めない】は大切なオランダの伝統文化
以上の理由の他にも、布が高価だった過去の名残でカーテンを買わないなどの理由もあるそうですが、いずれにしてもオープンになった大きな窓はオランダ文化の魅力の一つと言えるでしょう
実際、カーテンやブラインドを開けたままにしているお家の人は部屋の中を覗かれることに抵抗がないようです。あまり気にしていないし、自身も人が行き交う様子や外の世界を見ることが楽しいと思っているとのことでした。
しかし、近年外国からの移住者が増えたことやプライバシーを大切にする若い人も増え、年々カーテンを閉めないお家は減ってきているそうです。寂しいことですが、プライバシーを大切にしたい気持ちもわかります。
私は個人的に、これは継承すべき大切なオランダの伝統文化だと思っているので、郷に入れば郷に従えの言葉に従って?私達夫婦は寝る時の寝室以外はほとんどブラインダーを閉めません
自宅の大きな窓からの景色はとても良く、ブラインダーを閉めないでいるとご近所さんが家の前を通る時に笑顔で手を振ってくれたりします。行き交う人とも繋がれるし私自身もオランダ人のお宅を覗くのが好きなので開放的な窓を気に入っています。
以上が「なぜオランダ人はカーテンを閉めないのか?」の理由でした!
オランダに来たら是非、運河の美しい場所を歩きながらカーテンを全開にしているお家のチラ見を楽しんで、窓も人もオープンなオランダ文化を楽しんでくださいね